一般社団法人 日本エリオット波動研究所

Japan Elliott wave research institute

推進波と衝撃波とアクション波はどう違うのか

April 9, 2017

エリオット波動を学ぼうとする人がまず初めにぶち当たる壁は、その特殊で分かりやすいとは言えない用語でしょう。わたしも数年前に初めて「エリオット波動入門」を手に取ってページを開いたとき、推進波やらなんちゃら波やらと聞いたこともない波の名前がたくさん書かれているのを見て、思わず本をそっ閉じしてしまいました(笑)。

日本テクニカルアナリスト協会が使用するテキストのひとつである「日本テクニカル分析大全」の441ページには「衝撃波とは全体トレンドと同じ方向性を持った部分であり、修正波は全体トレンドと逆方向の部分を指す」という説明があります。また、わたしがネットで見つけた、米国エリオットウェーブインターナショナル認定のエリオティシャンの資格を持っているという凄い方のブログには、「推進波とは一つ上の時間軸の進む方向と同じ方向に進む波、修正波とは推進波と逆行する波」という意味のことが書かれています。この二つは衝撃波と推進波という記述の違いはあっても、どうやら進む方向によって、衝撃波や推進波は修正波と区別されるという説明しているようです。

では、5年間に及ぶ大きなトライアングルがあったとして、そのA波がジグザグで進行している場合はどうでしょう。A波はトライアングル全体と同じ方向性を持っていますから、このジグザグA波は推進波か衝撃波ということになります。フラットのA波はどうでしょうか。これも3波動の波ですが、フラット全体と同じ方向性を持っていますから、推進波か衝撃波でしょうか。ジグザグなのにそれが衝撃波ということがはたしてありえるのでしょうか。もちろんそんなことはあり得ません。複合修正のW波やY波も必ず修正波ですがダブルスリー全体と同じ方向性を持っています。

実は、推進波か修正波かというのは、波の方向に基づく分類ではないからです。推進波か修正波かは、波の形による分類です。先の二つの記述も、衝撃波や推進波の説明としては決して間違ってはいません。推進波も、推進波の一つである衝撃波も確かにその波を副次波とする一回り大きな波と同じ方向を向いています。

しかし波の方向による分類には、アクション波、リアクション波という別の概念と呼称がきちんとあるのです。一回り大きな波動と同じ方向に動く波をアクション波、一回り大きな波動とは反対の方向に動く波をリアクション波と呼びます。これはプレクター本にも詳しく記述のある、いわば基本の概念です。

推進波には、衝撃波(インパルス)とダイアゴナルがあります。また、ダイアゴナルには、リーディングダイアゴナルとエンディングダイアゴナルの二つがあります。一方、修正波には、ジグザグ、フラット、トライアングル、それらの複合型があります。

つまり、トライアングルのA波やフラットのA波は、修正波でありアクション波です。プレクターはこうした波動をアクションモードの修正波と呼んでいます。

そう考えると「日本テクニカル分析大全」の記述は二重の勘違いであることが分かります。まず、推進波と衝撃波の混同、そして、アクション波と推進波の混同です。ですから正しくは、「衝撃波とは推進波の一つである。推進波は全体トレンドと同じ方向性を持っている。推進波のように全体トレンドと同じ方向性を持っている波をアクション波という。また、修正波はジグザグやフラットなど3波動で構成された波である(トライアングルは除く)。修正波の中には、全体トレンドとは反対の方向性を持つリアクション波もある。」とすべきでしょう。修正波には、推進波と同じ向きのものもあるのです。

これはどういうことかと言うと、それほどまでに、エリオット波動理論における波の概念が難しいということにほかなりません。「エリオット波動入門」を読まれた方は、おそらく第一章の「広義のコンセプト」にあるこうした波の説明でまず心が折れたに違いありません。もしもそうでないなら、相当に理解力が優れた方だと思います。私は最初からノートにまとめながら本を読み始めましたが、このことが書いてある40ページ目でまず一回読むのを断念しました。波の種類について理解するまでに半年くらいかかった記憶があります。しかし、当然ながら、ある理論を理解するためにはそこで使われている言葉の意味を正しく認識する必要があります。推進波や衝撃波という用語は、エリオット波動理論の重要な概念の一部ですから、その意味を正しく理解していないということは理論を正しく理解していないも同じです。

「エリオット波動入門」には、このほかに、トレンド波や反トレンド波という呼称も出てきますが、それぞれ、アクション波、リアクション波と全く意味は同じです。また、同書には、基本波と協和波という概念も登場しますがこれについてはまた別の機会に説明したいと思います。

まとめ

波の方向性で分類⇒アクション波、
リアクション波波の形で分類⇒推進波、修正波
推進波には、衝撃波とダイアゴナルの二つがある
推進波は常にアクション波である
全体の方向と同じ方向性を持つ修正波をアクションモードの修正波という。(有川)