一般社団法人 日本エリオット波動研究所

ダイアゴナルの副次波はすべてジグザグもしくはジグザグの複合形か?

ダイアゴナルの副次波はすべてジグザグもしくはジグザグの複合形か?

2017年発行の「Elliott Wave Principle」の87ページにはダイアゴナルのルールとして、「Waves 1,2,3,4 and 5 of an ending diagonal, and waves 2 and 4 of a leading diagonal, always subdivide into zigzags.」という記述がある。

日本語に訳せば「エンディングダイアゴナルの全ての副次波とリーディングダイアゴナルの2波と4波はジグザグになる」となる。

これはエリオティシャンなら誰でも知っているダイアゴナルのルールである。

しかし、当研究所の「エリオット波動研究」の130ページと131ページにはダイアゴナルの副次波にフラットやダブルスリーが出現する可能性があると書いている。この記述に関して「間違いではないのか」という指摘がある。

結論から言うと、これは間違いではない。当研究所の観察によるとダイアゴナルの副次波は必ずしもジグザグやジグザグの複合形であるとは限らない。こう書くと、「副次波がジグザグでないのならそもそもその波動がダイアゴナルであるという認識がまちがっているのではないか」という反論があることも承知である。

では、そうしたルールを決めたプレクター自身はそのルールを厳密に運用してカウントしているのだろうか。

ここで、今一度、プレクターがエンディングダイアゴナルの事例として「Elliott Wave Principle」に掲載した2つのチャートをじっくりとご覧いただきたい。

その2つの事例とは、Figure1-17とFigure1-18である。Figure1-18と同じチャートはFigure4-15としても登場する。なお、邦訳の「エリオット波動入門」では52ページと53ページおよび180ページにそれらのチャートが載っている。

まず、Figure1-18だが、これは1977年11月から1978年3月にかけてのダウ(DJIA)の日足チャートである。

当該部分のチャートをTrading view で探し副次波をナンバリングしたのが次のチャートである。ナンバリングについてはFiguer4-15を参考にしたものであり当研究所の判断したカウントではない。

ここで、副次波のうちアクション波大きさを測ってみたのが次のチャートだ。

プレクターは「Elliott Wave principle」の中で収縮型ダイアゴナルの副次波の大きさについて「Wave 3 is always shorter than wave 1」であることをルールの一つとして挙げている。

しかし、上のチャートを見れば明らかだが、プレクターが収縮型ダイアゴナルの例として本に載せた波動は3波の方が1波よりも大きい。

つまりプレクターは自分で決めたルールに適合していない波動をダイアゴナルの例として挙げている。

一体、ルールとは何だろうか。

ここでii波に注目していただきたい。
ii波は
a波の始点が802.05 終点が825.10
b波の始点が825.10 終点が800.42
c波の始点が800.42 終点が835.15
の3波動構成の修正波である。

b波の終点がa波の始点を下に抜けているからこれは明らかにジグザグではない。もちろんダブルジグザグでもない。可能性があるとすればフラットかダブルスリーだろう。

つまりこのダイアゴナルは「全ての副次波がジグザグである」というエンディングダイアゴナルのルールも満たしていない。

さらに驚愕すべきことは、Figuer4-15の解説として、
「v=i=.618iii」と書いているのだ

これは、「ダイアゴナルの副次波5波と1波が同じ大きさで、それは3波の0.618倍」という意味だ。
プレクターが決めたルールは
「収縮型ダイアゴナルにおいては1波>3波>5波の大きさになる」
というものであるにも関わらずだ。同じ本の中で言っていることが完全に矛盾している。

このようにプレクターは自分で波形のルールを決めておきながら、同じ本の中でその波形の例として挙げている波動はそのルールを満たしていないというデタラメなことをやっている。

次にFigure-17についても触れておきたい。
これはインパルスの3波が延長したあとの5波がエンディングダイアゴナルになるという事例である。
元になったチャートは1976年2月から4月にかけてのダウ日足チャートだ。
これもTrading viewで当該チャートを探し出し次に提示してみた。

「Elliott Wave Principle」にはこのようなトレンドラインが引かれたチャートが掲載されている。本来ダイアゴナルの下値線はii波とiv波の終点を結ぶべきだがここではii波終点が完全に無視されている。

そこで下値線をii波とiv波終点を結ぶように引き直してみたのが次のチャートである。

するとどうだろう。僅かにだがトレンドラインが末広がりな拡大型ダイアゴナルになってしまった。また、各副次波の大きさを測ってみるとiii波が一番小さい。しかも形は拡大型なのに1波が5波よりも大きい。

プレクターが決めたルールでは、拡大型ダイアゴナルの副次波は「1波<3波<5波」になっている。つまり、このダイアゴナルもルールに適合していない。

ここではっきりしたことは、プレクターが「Elliott Wave Principle」に提示した2つの収縮型ダイアゴナルの事例はどちらもプレクター自身が決めたルールに適合していないということだ。

ルールに適合していないなら、それはダイアゴナルではないということになる。

なぜ、プレクターはルールに適合していないダイアゴナルをダイアゴナルの事例として掲載しなくてはいけなかったのだろうか。

それは、プレクターの決めたダイアゴナルに関するルールそのものが間違っているからではないだろうか。

現時点での当研究所のダイアゴナルのルールに関する提言は次の通りだ。

1. 収縮型であっても拡大型であっても、そのアクション波の大きさに厳密な順序立てはできない。
2. ダイアゴナルの下値線と上値線は必ずしも副次波の終点を結ぶ必要はなく、全体がウェッジ型または逆ウェッジになるように引けばいいのではないか。
3. 副次波は原則としてジグザグであると考えられるがときにフラットやダブルスリーが出現することを認めるべきで。

仮にこの提言が全て認められなければ、プレクターは「Elliott Wave Principle」でダイアゴナルではない波動をダイアゴナルの例として提示したことになる。

全てのエリオティシャンからのご意見を求める。

令和元年7月31日記

文責 有川和幸