エリオット波動理論では、波動が入れ子状に重なった、いわゆるフラクタクル構造になっているとされていることはみなさんもご存知だと思います。
波動の階層(ディグリー)によって「サイクル級」「プライマリー級」「インターミディエット級」「マイナー級」などといった名前がつけられており、2005年時点では、一番小さな波動は、「ミニスキュール級」という名前になっています。
ある本には、「サブサブミニュエット」という表記がありましたが、それは著者が勝手に作ったものだと推測され一般には全く通用しません。
ここで気になるのは、それぞれのディグリーがどのくらいの長さ(期間)の波動のことを指しているのかということではないでしょうか。
一般には、
「プライマリー級」が約2年、
「インターミディエット級」が約6カ月
といった認識ではないかと思われます。
そうした認識のもとに、「そうしたディグリーの存在はエリオット波動理論に時間論が存在している証拠」と言っている人もいるようです。
結論から言いますと、
ディグリーは時間論などでは全くありませんし、期間も決まっていません。
あくまでフラクタル構造の何層目かを特定し波動と波動の位置関係を知るための便宜的な概念です。
現在の日経平均はスーパーサイクル級の5波動目が進行しているといわれていますから、このことを例に話を進めてみることにしましょう。
当ホームページに「スーパーサイクル(IV)波は本当に終わったのか」という記事がありますから、まずはそちらをご覧いただいてから、本編の続きを読んでいただくとより理解しやすいかと思われます。
もしも、現在もなお「スーパーサイクル級」の4波動目が終わっていなくて、 2009年からは、フラットを形成中のスーパーサイクル(IV)波のうち、b波が進行中だとしたらディグリーの表記はどうなるでしょうか。
フラットならb波は3波動ですから、いま進行中と想定されている「プライマリー級」4波を含むインパルスが5波まで完成したものがそのうちのA波になります。
ちょっとややこしいですが、そうなると、そのA波が「プライマリー級」ということになり、それ以下は一段階の格下げになります。つまり、2015年高値からの修正局面は「プライマリー級」4波ではなく、「インターミディエット級」4波という表記になるわけです。
つまり、同じ長さの波動が「プライマリー級」にも「インターミディエット級」にもなるのです。
こうしたことは、トライアングルの中のジグザグや、延長した3波などにも頻繁に起きています。
これだけをみてもあるディグリーに決まった長さ(期間)は存在しないことは明らかです。
「スーパーサイクル級」波動自体も延長しますし、そのひとまわり上の「グランドスーパーサイクル級」は波動も延長する可能性はありますから、実際に日々見ている波動がどのディグリーであるかはマーケットの歴史が全て終わってしまうまで確定できるものではないのです。
ですから、ホームページに掲載しているチャートに付したナンバリングも全て暫定のディグリーです。マーケットの近未来を想定するのに、現在、「グランドスーパーサイクル級」の延長波の中にいるのかどうかはよほど神経質な人でない限りどうでもいいことですから。
つまり、あるディグリーがどれだけの長さ(期間)であるかということは、本質とはかけ離れた論議ということになります。
ただ、初心者の人に分かりやすく説明するために、目安として、「プライマリー級」は大体2年くらいということは意味のないことではありません。しかし、2年くらい続いた波動が「プライマリー級」であるかどうかは全く分からないのです。
当ホームページのチャートに付したナンバリングのディグリーが執筆者によって違うのはそのためです。ですから「マイナー級」波動が6カ月続いたり、2週間で終わったりしても別段驚くことではありません。(有川)