エリオット波動で稼ぐことは可能か? PART2
――エリオット波動で稼げるようになるために、修練の期間はどのくらい必要か?
前回:エリオット波動で稼ぐことは可能か?【PART1】|私がエリオット波動に魅せられた理由と、有効と思われる知識の事例集
改めて、エリオット波動の有効性について
所長の有川さんが書いた「エリオット波動をマスターすれば大金持ちになれるか?」というコラムに対する私小泉の考えを述べたアンサーコラムPART2です。
投資やトレードの目的は紛れもなく「お金を稼ぐこと」ですから、その手法が稼げる手法なのかどうかは投資家・トレーダーにとっては大問題です。この場合、「稼げる」というのは、もちろん、「一時的に稼げる」ということではなくて「コンスタントに稼げる」という意味です。
私の結論としては、エリオット波動というのはコスタントに稼げる可能性を秘めた手法だと思う、ということでした。
その理由は、経験的にですが、エリオットの発見したインパルス、ダイアゴナル、ジクザグ、フラット、トライアングルなどの基本的な値動きのパターンが、どんな時間軸においても繰り返し観察されており、たとえば、
- 「インパルスの3波の3波だから急激で大きな動きになりそうだ」
- 「ダイアゴナルが出現したから波動の開始もしくは終了である可能性がある」
- 「ジクザグの形がほぼ確定したから今の値動きは修正波であり、(上昇なり下落なり)大きなトレンドはまだ終了していない」
- 「フラットのB波だから“だまし”になる可能性がある」
- 「トライアングルが出現したから、まだ大きなトレンドは続いている可能性があるが、トライアングル完了後にあとひと波動出現して大きなトレンドが完了しそうだ」
などというような想定が可能になり、それは有効性がある程度高そうだ、ということです。
いずれのパターンについても、エリオット波動でなくても一般的にある程度知られているパターンです。しかし、エリオット波動ではそれらのパターンの特徴や波動形成の際の習性、さらに、それらの波の連なり方の特徴などがかなり詳細に述べられていて、とても実践的な体系になっています。
このあたりのことについては当研究所が作成した『エリオット波動研究』(パンローリング刊)に詳細かつ丁寧に書きました。エリオット波動の基礎知識を一通り知っていただくことで、今までランダムに見えていた株価や為替の動きにもある種の秩序があるということを感じていただけるのではないかと思います。株式投資やFXなどに関心がある人にとっては、かなり興味深く読んでいただける内容になっていると思います。
面倒くさくなければ儲からない
以上のように、私としては、エリオット波動は有効性が高く、学び甲斐があるものだし、それによってコンスタントにお金が稼げるようになれる可能性がある手法だ、という風に主張しています。それはPART1でも述べたとこです。
一方、所長の有川さんは、「エリオット波動を苦労して習得したからと言って、そう簡単に儲かるわけではい」という主張です。
二人の主張は矛盾しているようですが、私はそうは思いません。夏休み休暇の期間が半分過ぎたことについて「まだ半分ある」と捉えるのか「もう半分しかないのか」と捉えるのかの違いと同様に、単に表現の違い、物事の捉え方の違いに過ぎないと思います。
有川さんも、「エリオット波動をいくら身に付けても儲からない」と言っているわけではく、「簡単には儲からない」ということ言っているわけで、それに関しては私もそう思います。
世の中の原理として、「簡単に儲かる」という話があったらそれはたいがい詐欺話と相場が決まっています。簡単に儲かる話があるのなら、それは自分よりもっと賢い誰かが先に見つけて実践しているでしょう。そして、競合が多くなればそれはやがて「簡単には儲からない」ものになっていくはずです。つまり、「簡単に儲かる」という状態が永続的に続くということはない、というのがこの世の中の原理だと思います。
そして、「コンスタントに儲けられる手法」というのは、どれも「かなり面倒くさい」のが常です。多くの人が「それは面倒くさいわ」とか「難しいわ」といって撤退していくような手法の中に「コンスタントに儲けられる手法」というものがあるものだと思います。そして、エリオット波動も、「面倒くさいけど、コンスタントに儲けられる可能性のある手法の一つだ」と言えると思います。
「面倒くさい」は乗り越えられるもの
ここで少しエリオット波動から外れる話をさせてください。
私自身、実は最も得意なトレード手法は決算ニュースや会社四季報から銘柄やタイミングを捉えてトレードするというものです。
決算ニュースや会社四季報で業績の変化に注目します。さらに、PER、事業内容、株価チャートなどを総合的に勘案して、「相対的にこの銘柄の上昇余地が大きそうだ」という銘柄をピックアップしてトレードしていきます。
日本には3600以上の上場企業がありますが、こうした作業を一年間の中で繰り返していくことで、「今はどの銘柄が上がりそうか」、「どの銘柄が上がらなそうか」などの判断能力や勘が磨かれていきます。
私は20代半ばから株式投資を始めて、最初の数年はなかなかうまくいきませんでした。損失を重ねて30歳の頃には数百万円の借金を負うまでになりました。
そうした中でも試行錯誤を続けたのですが、30歳くらいのころに「会社四季報や決算ニュースをチェックして、PERや株価チャートなどを総合的に勘案する手法」がいいのではないかと思い始め、さらに試行錯誤して自分なりにノウハウを体系化して、35歳頃から今現在に至るまで15年間、毎年コンスタントに利益を生み出せるようになりました。カリスマトレーダーに比べると恥ずかしいですが、毎年サラリーマンの平均年収の数倍はコンスタントに稼げている状態です。
こうした自分自身の経験や、知り合いの投資家・トレーダーでコンスタントに稼いでいる人たちの例を見ていると、「風雪に耐えてきた手法ならどの手法であっても、基本に忠実にまじめにコツコツやっていれば、やがてコンスタントに稼げる実力が得られる」という風に思うようになりました。
移動平均線だけを使ってコンスタントに稼いでいる人もいますし、経済指標の発表などのイベントにおける値動きを利用したトレードでコンスタントに稼いでいる人もいますし、財務諸表を丁寧に読み込んで投資することでコンスタントに稼いでいる人もいます。
中身のない手法なら消えていくのは時間の問題ですが、その一方で何十年も伝承されている手法にはそれなりに理由があるはずです。
そうした手法の中から自分が直感的にピンとくるもの、自分に合いそうなものを選んで、時間をかけて手に馴染ませていく必要があります。
どんな手法やツールでも、それを自分が使いこなせるようになるまでにはそれなりの時間が必要です。そうした「修業期間」をきちんと意識して経ていく必要があります。そして、それは結構面倒くさいプロセスだと思います。
面倒くさいプロセスであるがゆえに、自分自身がその手法に関して可能性を感じることができて、ある種の楽しさを覚えることができる、ということが必要になります。そうでないと長続きしません。どういう手法が自分に合うかは、自分の持っている能力や性格によるところも大きいと思います。ですから無理する必要はありません。エリオット波動に興味が持てればそれを勉強してみるといいと思いますが、興味を持てなければ自分に合いそうな別の手法を探すべきでしょう。
エリオット波動は大きな可能性を秘めた手法だと思いまが、短時間で習得できてサクサク儲かるようになる手法ではありません。そもそも、そんな手法は存在しないと思います。
エリオット波動に限らずどんな手法でもそうですが、本当に自分の手に馴染ませてコンスタントに儲けられるようになるにはそれなりに時間がかかりますし、面倒くさいプロセスも必要です。
しかし、その面倒くささは乗り越えることができますし、面倒くささを乗り越えた先には「趣味として楽しく作業しながら、コンスタントに儲けられる」という境地が待っているでしょう。そういう状態こそ投資家・トレーダーが求めるべき境地です。他人が見たら面倒くさくてとてもできないという作業を、自分は楽しみながら続け、そして、コンスタントに儲けられる、という境地です。
所長の有川さんは、飽きもせず1日中日経平均やドル円やその他さまざまな値動きを観察してエリオット波動分析をしています。1日の疲れをいやすはずの夜には、コーヒーを飲みながらゆったりとチャートを眺めて考え事をするのが何よりものリラックス方法だといいます。
私自身は、会社四季報を最初から最後までチェックしたり、3600社の決算をチェックしたりする作業が楽しくて仕方ありません。自分にとっては宝探しをする少年のような気持ちでそれらの作業をしています。エリオット波動分析についても徐々に楽しくなってきているところです。
たぶん、こうした作業はほかの人が見たら「面倒くさくて、やっていられない」という作業だと思います。
簡単に儲けたくて、そうした面倒くささを避けたいと思う人たちが必ず吐くセリフは、「エリオット波動なんて役に立たない」、「会社四季報なんかで儲かるわけがない」というものです。そういうセリフを私は今までさんざん聞かされてきました。
しかし、そういうセリフは私の心を小躍りさせます。自分にとっては楽しい作業が、他の人たちには「面倒くさくて、やっていられない」作業なんだなということが、その作業の有効性をなによりも証明しているものだと思われるからです。
皆にとって面倒くさいことが、自分にとっては面倒くさくなくなる時、それこそが自分にとっての強みとなるのです。しかし、そうした境地に達するまでに、ある程度意識して面倒くさい修練のプロセスを経る必要があります。
そこで次に問題となることは、「どのくらいの時間を費やしたらそういう境地に達せられるのか」ということです。
1000時間が一つのメド
結論を言うと、1000時間が一つのメドなのではないか、というのが私の考えです。
私が得意とする決算情報・会社四季報を元にしたトレードもだいたい1000時間くらい勉強・練習すれば、ある程度コンスタントに儲けられる状態に達するのではないかと思います。
ほかの手法についても、だいたいそのくらいがメドかなと思います。
ただし、闇雲に時間だけ費やしてもダメです。
まずはきちんと基本を勉強すること。
そして、その基本を元に自分なりに投資戦略やトレード戦略を合理的に考え、実際に売買しながらトライ&エラーを繰り返すこと。そういう作業を繰り返すことによって、細かい実践的な知識・技能・コツ・勘が磨かれて、本当の意味で自分の得意技にしていくことができます。
1000時間というと、
・毎日1時間×3年間、あるいは、
・毎日3時間×1年間
という計算になります。
1000時間の修練のプロセスを経ても、それでようやくスタート台に立てるという状態だと思いますが、ある程度コンスタントに収支プラスの状態にもっていける可能性が高いのではないかと思います。
もちろん、それでも相場に悩む場面からは解放されるわけではありませんが、どんな場面が来ても自分なりに考えて対処し、楽しみながら成長しつつ少しずつパフォーマンスを上げている、という「自立した投資家」の状態に入れるのではないかと思いもます。
もちろん、物事を習得するスピードには個人差があります。ここでいう1000時間というメドはあくまでも一つの目安に過ぎません。
しかし、なかなかいい線をいっているのではないかと思います。
どんな物事も、「一通り習得できた」というレベルになるには1000時間くらいが目安とされることが多いように思います。
・中学・高校・大学に関わらず受験勉強の一つの科目
・英語のリスニング能力
・ピアノやギターなどの楽器
・ゴルフやテニスなどのスポーツ
なども、勉強・練習時間1000時間というのが、ひとまとまりの技能や知識を習得する一つのメドだと言われることが多いようです。
私は音楽もスポーツもダメですが、若い時期に受験勉強だけは一所懸命やりました。中学受験と大学受験を経験しましたが、1科目1000時間というのはかなりいい線いっていると思います。そのくらいの時間をかければ、かなり難関の中学や大学の合格レベルにも行けると思います。
英語のリスニングについても「ヒアリングマラソン」という定番の教材が「1000時間」というトレーニング時間を設定していることが有名です。
1000時間やっても、達人というレベルには遠いと思います。
しかし、それに関する勉強・作業・トレーニングが苦でないという境地には達することができると思います。株式やFXの投資・トレードでは、先ほど言った通りある程度コンスタント儲けることが可能な状態になってくると思います。
では、達人に域に達するにはどのくらいの時間が必要なのか。
これは、スポーツや音楽でよく一流になるために必要なトレーニング時間は「10000時間」と言われます。これは毎日1時間のトレーニングを30年間続ける、あるいは、毎日3時間のトレーニングを10年間続ける、という計算になります。
それでも、スポーツや音楽ではプロになるには足りないでしょうが、アマチュアとしては上級者になれるでしょう。
投資やトレードに関しては、10000時間という修練を積めば、プロと呼ばれる投資家の大半を凌駕できるレベルに達するだろうなと思います。
最初の1000時間というプロセスを耐え抜けば、そこから10000時間というプロセスまでは時間の割にはつらくないのではないかと思います。
エリオット波動を習得するなら、まずは「最初の1000時間の修練」を経る心づもりでいましょう。そして、その1000時間を本当に有効なものにするためにも、まずは正しい知識をバッチリと身に付けましょう。
これまではエリオット波動の基礎知識を身に付けるための本も不在であり、誤訳だらけのテキストに頼らざるをえない状況が続きました。しかし、状況は変わりました。私たちが制作した『エリオット波動研究』は、私がまさに20年前に読みたかった内容のテキストです。これをしっかり身に付けて相場と向き合っていただければ、コンスタントに稼げるエリオティシャンとして自立できる可能性は高いのではないかと思います。
今回は本を出版したばかりということもありやや宣伝めいてしまいましたが、本サイトを見ながらエリオット波動を勉強したいという方は、ぜひとも『エリオット波動研究』をご一読いただきたいと思っています。それこそがエリオット波動習得の近道だと思います。
前回:エリオット波動で稼ぐことは可能か?【PART1】|私がエリオット波動に魅せられた理由と、有効と思われる知識の事例集
(このコラムパート3に続く)