一般社団法人 日本エリオット波動研究所

Japan Elliott wave research institute

C波が巨大化したフラットも横ばい修正か?

April 7, 2017

日々チャートをカウントしていると、C波が異常に大きいフラットに出くわすことがあります。そうした時、まずは自分のカウントを疑い、鉛筆の芯を舐める勢いでじっくりとチャートを眺めるのですが、大抵の場合ほかに整合性のあるカウントはなく、巨大化したインパルスの下に「C」と符号を書き込むことになります。

わたしが知る限りではプレクター本にはこうしたフラットの記述はありません。もちろん、拡大フラットの場合はC波が巨大化するという事例は出ていますが、B波がA波の始点で止まるいわゆるレギュラータイプに関しては、C波はB波の始点をわずかに超えたところで止まるという説明になっています。

ところが、1946年にエリオットが書いた「自然の法則」にも、1960年のボルトン本にも、C波が巨大化するフラットが図解と共に紹介されています(参考図はボルトン著/エリオット波動~ビジネス・サイクル/日本証券新聞社刊より抜粋)。プレクター本より前に出たボルトン本にも記述がありながら、それを絶対に読んだはずのプレクターが何故C波巨大化フラットについて言及しなかったのかはわたしには分かりません。これはあくまでわたしの個人的な想像ですが、プレクターはフラットを「横ばいの修正」と分類していたため、ジグザグ並みの「値幅修正」をすることになるC波巨大化フラットを認めることに躊躇したのではないでしょうか。

実際にチャートを観察すると、C波が巨大化した場合には大きく値幅を修正し、実質的にジグザグと同じような役割を果たすことが確認できます。またエリオットは、「7波動で値幅修正している波動は、そのなかの細かい動きを観察してみると、1波と2波がそれぞれA波とB波、3波から7波がC波に該当するフラットである」という意味の記述を図解入りでしています。これはいわゆるC波が巨大化したフラットのことです。

ここで問題となるのが、複合修正にC波巨大化フラットが現れたときの波動カウントとその後の波動想定です。たとえば複合修正のW波がC波巨大化フラットになった場合、プレクターの定義をあてはめると、その後のX波を挟んだY波でさらに「値幅修正」をすることは認められません。複合修正において「値幅修正」するのは、ダブルジグザグとトリプルジグザグだけであり、W波がフラットになる可能性があるダブルスリーやトリプルスリーは「横ばいの修正」でなければいけないからです。しかし、日々カウントをしていると、W波にC波巨大化フラットが出現すると、その後のY波でも「値幅修正」してしまうことにしないと辻褄が合わない状況に出くわすことがしばしばあります。

ここで考えてみたいのが、複合修正とは何かという問題です。

ご存じのように、修正波の局面では、インパルスやダイアゴナルといった推進波の局面に較べ、波動の進行予想が大変困難です。はっきり言うと不可能です。フラット自体が修正波の集合体みたいなものなのに、さらにX波という修正波を介在して別の修正波と繋がるかもしれないし、繋がらないかもしれないというような状況に出くわすわけですから予想できるはずがありません。実際のチャートを見ても長い修正局面ではローソク足の並びがもうぐちゃぐちゃです。こうした「ぐちゃぐちゃ」をなんとか体系立てて説明しようとしたのが複合修正だと思います。じつは、この複合修正を使うと、推進波のダイアゴナルはトリプルジグザグとしてカウントすることも可能です(添付図版参照)。さらに修正波のトライアングルはトリプルスリーとしてもカウントできます。また、3波動か5波動かはっきりしない副次波を持つ小さなディグリーであれば推進波のインパルスでさえダブルジグザグにカウントできてしまうのです。つまり、複合修正を使えばどんな波動でもそれらしくカウントできることになります。たまに、B波とカウントしたいところにインパルスにしか見えない5波動が現れることがありますが、そうしたときはこの「奥の手」を使ってそれをダブルジグザグとして処理することが可能なわけです。

こうしてみると、なんだかインチキっぽく思えてきますよね。しかし、わたしたち日本エリオット波動研究所がエリオット波動理論をいきなり否定するつもりはもちろんありません。わざわざ社団法人まで設立し研究員を集めて時間とお金をかけて研究しているのは、エリオット波動をさらに実用性のある理論に磨くためであります。

複合修正に関しては今後の大きな研究課題でもあり毎日研究員が事例研究をしています。

ただ、これだけは言っておきます。某著名アナリストのレポートにあるようなZ波それ自体をダイアゴナルとするカウントは現在のエリオット波動理論を完全に逸脱しており、そうしたカウントの基に作られた今後の想定が結果として当たったとしてもそれはエリオット波動による予想とは言えません。Z波は修正波であることが必要条件であり推進波であるダイアゴナルにはなりえないのですから。(有川)