一般社団法人 日本エリオット波動研究所

Japan Elliott wave research institute

メルマガ第149号全25ページ(令和2年11月7日発行)より抜粋

December 5, 2020
メルマガダイジェストでは、毎号15ページから30ページの分量があるメルマガの中から、その時点での波動の進行想定に関するチャートが掲載された任意の1~2ページを抜粋して紹介しています。 進行想定は随時更新されていくため、現在は別の想定がメイン想定となっていることがしばしばあります。それは最新版のメルマガにてご確認いただけます。 進行想定とは、その時点のチャートをエリオット波動原理のルールやガイドラインに適合させた結果であり、相場予想ではありません。

前号でダウの次の部分のカウント案を募集したところ2名の読者の方からカウント案が届いた。(週足)

なお、プレクターは次のようにカウントしているが(ディグリーに関する解釈は違う)

その部分がインパルスとカウントできないことは前号で指摘したようにチャートを詳しく見れば一目瞭然である。

残念ながら、日本の個人投資家は勉強熱心なため、EWIの波動原理を無視したカウントやレポートに簡単に騙されたりはしない。

では、まずは田中さんのカウント案から見て行こう。

このカウントの難点は2つある。1つは、(2)がフラットとジグザグのダブルスリーになっているが、リーディングダイアゴナルのルールには「2波と4波は必ずジグザグまたはジグザグの複合形になる」というものがある。2つ目は(1)波と(4)波が重なっていない点だ。しかし、このように解釈すれば全体が確かにウェッジ型なっている。

 

つぎに、荒堀さんのカウント案を見てみよう。

このカウントの難点は2波部分のカウントが不明であるという点と、やはり1波と4波が重なっていないという点だ。

まず、ダイアゴナルの1波と4波が重ならないこと関しては、「ELLIOTT WAVE PRINCIPLE」のFigure1-18でそうしたダイアゴナルも認められている。また、Figure1-18のダイアゴナルは2波がフラットになっていて、「ダイアゴナルに2波と4波は必ずジグザグまたはジグザグの複合形」というルールを実は満たしていない(詳しくは弊社ホームページに掲載)。

よって、田中さんの案があながち間違いであるとはいえないし、少なくとも絶対にインパルスとカウントできない波動をインパルスとしているプレクター案よりは優位性が高いだろう。荒堀さん案も2波の波形が不明ながら、その他にルール違反は見当たらない。

 

次のチャートはお二人のカウントを折衷した著者案である。(日足)

これらの考察から①波終点の位置は次の①である可能性があると言えるだろう。(週足)

さてここからが今号の本題である。

 

従来、ダウにおけるリーマンショック後安値からのカウントはつぎのようなものであった。(週足)

しかし、今回の検証によって、①の位置に重大な疑義が生じた。

 

また、このカウントでは、②―④ラインと①―③ラインは次のように平行チャネルからは程遠いという弱点もある。

一方、このカウントの強みとしては、④波に典型的なトライアングルが出現していることや、次のように③波がキレイなチャネルになっていることなどを挙げることができるだろう。(週足)

しかし、それら強みとして挙げたものは所詮はガイドラインである。インパルスの3波は必ずインパルスでなければならないという絶対的なルールとは比較にならないくらい「どうでもいい」ものだと言っても過言ではない。

 

改めて、プレクター説の①波部分を見てみよう。(日足)

どう頑張っても(3)波部分をインパルスとカウントするのは無理である。

 

ここで、浮上してくるのが次のカウントということになる。(週足)

もうお分かりだと思うが、従来のカウント(プレクター説)が間違いであることが明らかであることをご理解していただくために、前号では読者の皆さんに実際にカウントしていただくように促したのであった。筆者も、安易にプレクター説に乗っかっていたことを深く反省する次第である。エリオット波動原理の知識がなく自分でカウントできない人は「プレクターがそんな間違いをするはずがない」と思うかも知れない。だがそれは単なる認知バイアスであるし、そうしたバイアスから抜け出せない限りは客観的な波動分析などできるはずもないだろう。

このカウントによると、現在進行しているのは拡大型トライアングルのⒹ波ということになる。

 

このカウントでは次のようにインパルス全体が狭いチャネルに収まることができる。

 

 

また、②―④ラインと①―③ラインを結ぶと次のようになる。(ただし①―③ラインは③の終点ではなく③波動の外側のトレンドラインに合わせてある)

 

⑤波のはみ出た部分はスローオーバーと解釈できるだろう。

 

同じようにS&P500をカウントすると次のようになる。(週足)

 

 

アクション波同士の比率を測ってみると次のようになっていることがわかる。

 

 

しかし、これはあくまで0.618という数字が前提にあっての「こじつけ」であり、客観的な計測からは0.618という数字は出てこない。フィボナッチ信者にこのカウントを納得させるための筆者の詭弁である。エリオット波動分析ではえてしてこの手の詭弁が登場するが、それらはほぼ全てが再現性のない「こじつけ」であり、実測数値にフィボナッ

チ比率が出ることはほとんどない。

 

それでも、筆者がこの新しいカウントに優位性を感じるのは、3月のコロナ安値からの上昇局面が拡大型トライアングルのⒹ波であるという点である。

 

 

「エリオット波動入門」(パンローリング)には次のように書いてある。

 

 

B波はまやかしである。それはダマシ、強気の落とし穴、投機家のパラダイス、端株投資家の熱狂的な心理、または愚かな機関投資家の自己満足である。B波は数少ない銘柄に的を絞ることが多く、(中略)「この相場は何かが変だ」と自問するときは、おそらくほとんどがB波のときだろう。修正波として上昇する拡大型トライアングルのD波やX波も同じ特徴を備えている。(誤訳部分を筆者にて訂正済)

 

さらには、同書ではD波の事例として、1970年から1973年の上昇相場を挙げ、「上昇する銘柄数は再び少なくなり、値を上げるのはニフティ・フィフティー(素晴らしい50銘柄)とグラマーストック(人気株)に絞られていた(中略)政府は大統領選挙を控えて、全体的な株高期間中の架空の繁栄を維持するために全力でインフレ政策を推進していた」とある。

 

ここに書いたD波の特徴と3月のコロナ安値からの相場が見事に一致していると感じるのは筆者だけではないだろう。「新型コロナで経済が壊滅しているのに何故こんなに株