2020年に発行したメルマガの中から225CFDの進行想定に関する部分を振り返って反省したメルマガ第156号抜粋です。(今回は長いです。最後まで読んで下さい)
4月5日のメルマガ第120号では先の想定変更により、次のような1時間足カウントをしてしまうことになった。ここでメルマガ第113号時点に引き返せばよかったのだが、一旦メイン想定を変更したあとでは頭の切り替えが難しいという現実が分かる。
一方で、4月25日のメルマガ第122号ではダウに関して次のように30000ドル超えを想定していた。この時は、ダウは⑤波を進行中という想定であった。(日足)
6月6日のメルマガ第127号では、225CFDの1時間足を次のようにカウントしていた。
この時から3月のコロナ安値からの初動をリーディングダイアゴナルとカウントするパターンと、
次のように6月高値までをダブルジグザグとするパターンの2つが併存することになった。
なお、現在この部分に関して、次のカウントをメインとしている。(2時間足)
いまになって見てみると、前ページ下のカウントは結果として的確であったことが分かる。こうしたことができるのはルールやガイドラインの客観的な適用と細部まで注視したカウント作業があるからにほかならない。
ところが、その後はカウントも進行想定も不調期間が続いた。
6月27日のメルマガ第130号では、(W)に対するリアクション波(ここではディグリーの表記が一段大きくなってⓌとなっている)で次のように深い修正があると想定した。
これはジグザグのガイドラインに基づくものであったが、実際の修正は20%にも満たない小さなものとなった。
しかし、そんなことは事後的にしか分からないため、8月1日のメルマガ第135号でも次のように(X)波による深い修正を想定することになった。(2時間足)
このような事例を幾つも経験して明らかになったことは、「ELLIOTT WAVE PRINCIPLE」に書いてあるジグザグB波のリトレース率に関するガイドラインは極めて再現性の低いものであるということだ。
それは、ダイアゴナルの2波や4波によるリトレース率のガイドラインにも言える。
日々の波動観察とその記録からは、リトレース率に関してガイドラインとして適当なのは「インパルスにおいて2波は1波を比較的深くリトレースし、4波は3波を比較的浅くリトレースする。4波によるリトレースはおおむね3波の副次波4波終点を目途とする」ということだけだと考えていいということが分かってきた。
これらのことが示唆するのは、「ジグザグにおいてB波のリトレース率は全く予想できないからあらゆる可能性を念頭においてカウントすることが必要」ということになるだろう。
実際、ジグザグのB波がA波を10%程度しかリトレースしないことも、90%以上リトレースすることも「わりとよくある」ことである。
以前オンラインセミナーで解説した通り、グレン・ネリーの波動理論によるとB波がA波を61.8%以上リトレースしたものは、ジグザグではなくフラットの見做すことになっている。もっともグレン・ネリーが標榜しているのはエリオット波動原理をベースに彼自身が確立した「ネオ・ウェーブ」であり、エリオット波動原理そのものではないが。
8月24日のメルマガ第138号では、そうしたジグザグB波の深いリトレースを根拠として、サイクル級b波のⒷ波に関しては次のような想定をメインとした。
ここではb波全体をフラットと想定している。(週足)
この辺になってくるとまだ記憶に新しいが、9月5日のメルマガ第140号では3月のコロナ安値からの波動に関し、次のようなカウントをメインとしている。(4時間足)
それまでの、ダブルジグザグを副次波に持つダブルジグザグというカウントが破綻した訳ではなかったが、よりシンプルなカウントを提示しようとした結果であった。
ようやくダブルジグザグの(X)波による深いリトレースというガイドラインによる呪縛から解放されているのが分かる。現時点での反省としては「ジグザグB波のリトレース率に関するガイドラインが再現性に乏しいということにもっと早く気付くべきだった」ということだ。
9月26日のメルマガ第143号では3月のコロナ安値からの波動を次のようにカウントしている。この時は、サイクル級b波がフラットであっても拡大型トライアングルであっても、1月高値は奪還するであろうがまさかこの後一気に26900円まで上昇するとは想定はしていなかった。(4時間足)
10月10日のメルマガ第145号時点での225CFDのサイクル級b波の進行想定は次の2通りであった。(週足)
以前からある、フラット想定と、拡大型トライアングル想定である。しかし2つの想定は共に3月のコロナ安値からの波動がこのあと下げてからその後に一段高するように破線で描かれている。(上のチャートではⒹ波部分に該当)
これは13ページの上のチャートにある(W)(X)(Y)が完成した後に、そのダブルジグザグを副次波に持つⓌⓍⓎという一回り大きな波動を想定していたということである。
次のチャートは10月24日のメルマガ第147号に提示した3月のコロナ安値からの波動の進行想定だ。このように(W)(X)(Y)が1月高値に到達せずに終わるというカウントがベースにあったため、メルマガ第145号提示したようなフラットや拡大型トライアングルが成立するには、一回り大きなⓌⓍⓎというダブルジグザグに発展する必要があると考えて
いたのであった。
11月7日発行のメルマガ第149号では3月のコロナ安値からの波動のカウントを次のように変更した。この変更により、前ページで触れたようなⓌⓍⓎという一回り大きなディグリーのダブルジグザグを想定する必要はなくなったと言える。(4時間足)
11月21日のメルマガ第151号で次のようなカウントを提示したことは記憶に新しいだろう。この例を出すまでもなく進行中の小さな波動のカウントや想定を「当てる」ことはガイドラインの適用を厳密に行っても非常に難しく、仮に「当てた」としてもそれは偶然の産物であることがほとんどである。
偶然というのは「再現性がない」という意味でもある。マーケットを分析する人はとかく「当てた」のかどうかで自分の手法を評価し、また評価されることが多いが、それが偶然によるものであればギャンブルの才能を評価されたに等しい。
分析者に必要なのは「当てる」ことに執着するのではなく、分析方法が正しいかを常に検証し、より再現性が高い手法へと更新を重ねていくことであると筆者は考えている。よって、「理論や手法などどうでもよく儲かったかどうかが全て」といった功利主義的な評価しかできない投資家とは一定の距離をおいて今後もエリオット波動原理の研究を続けていきたいと思う次第だ。
さて、12月5日のメルマガ第153号では、次のようなカウントを提示した。ここではYの(y)のc波がダイアゴナルとカウントされているが、それが正しいのかどうか、12月24日時点ではまだはっきりしていない。
続くメルマガ第154号では、225CFD、ダウ、S&P500、ナスダック100といった主要な指数のチャートが3月のコロナ安値以降すべて(W)(X)(Y)というダブルジグザグで進行していることを突き止めた。だが、それも正しいと証明されたわけではなく、現在も波動の進行を客観的な姿勢で観察している。
ここまで、メルマガで提示してきたチャートを元に主に225CFDのカウントと進行想定がこの一年間でどのように更新されてきたかを振り返ってみた。
この振り返りを読んで、エリオット波動原理に対して「当たる」と思った人もいれば「当たらない」と思った人もいるだろう。しかし、残念ながらそうした評価は我々研究所所員にとってはどうでもいいことである。ましてやたまたま「当たった」過去の予想だけをピックアップしてそれを自慢げに吹聴するアナリストに対しては軽蔑の念しか抱かない。
はっきりと言えることは、メルマガという形で報告された日々の研究記録がエリオット波動原理のルールやガイドラインの見直しに貢献していることに大きな手ごたえを感じているということである。
ここでガイドラインについて少し考えてみたい。
ガイドラインを守るとは簡単に言えば次のようなカウントをメインとしないということである。(4時間足)
このカウントは波の数だけに注目すれば絶対に間違いであるとは言えない。しかし、少なくとも次のようにガイドラインを満たしていない。
①(i)波がリーディングダイアゴナルなのに(iii)波が延長していない
②(ii)波によるリトレースが浅い
③通常インパルスの(iii)波はそれ自体がチャネルに収まる形になりやすいがそうなっていない
④(iv)波が(iii)波のiv終点付近までリトレースしていない
⑤(iii)のvはダイアゴナルとカウントされているが、以降その始点までのリトレースが確認されていない
⑥全体がチャネルに収まっていない
このような理由から、当研究所では3月のコロナ安値からの波動をこのようなインパルス
とはカウントしていない。複数のカウントが存在するのがエリオット波動原理による分析
の本質だが、その中からより多くのガイドラインに適合したカウントの優先順位を上位に
もってくるというのが運用上の基本だからである。主観やニュースなどの材料を元に優先
順位をつけるのはエリオット波動原理による分析とは言えない。